スピーカー自作で、バスレフ型と双璧をなす人気タイプがこのバックロードホーン型スピーカーです。
市販品ではほぼ存在しないタイプというところも、自作のやる気を刺激するタイプですね。
それにバックロードという響きも個人的にかっこいいと思いますし^^
先日ご紹介しましたスピーカーの前にホーンが設置されるフロントロードホーン型、そして名前からもわかるとおりスピーカーの後ろにホーンを設置するのがバックロードホーン型です。
バックロードホーン型にはいろいろな形があります。
オーソドックスというか、見た目的に一番普通(?)なタイプがこんな感じでしょうか。
バックロードホーン部分については、いろいろとアレンジしてみたい自作派の心をくすぐるってもんです^^
バックロードホーン型といえば、長岡先生(故 長岡鉄男氏)と言われるほど人気のあるモデルを数多く設計された方がおられます。
(長岡氏の代表作「スワンタイプ」については、下記参考イラスト有)
バックロードホーン方式の意図する形はこんなイメージですね。
フロントロードホーン型は放出される高音域がありますので、高音を劣化させるようなホーン形状にはできません。なので基本的にはストレートのラッパ状ホーンを取り付けることとなります。
しかし、スピーカーの後ろから放出される音は、中音、高音域についてはなるべく減衰させて低音域を増幅して取り出したいところ。
その点から、後側に設置されるホーンはストレート形状である必要性は低くなりますし、ホーン部を折り曲げ、折り曲げすることで高音域~中音域の減衰効果も狙えます。
音道が長いことでは共鳴方式がありますが、こちらは折り曲げ等が多いと共鳴による低音増強効果が薄れるのですが、共鳴型とは動作原理が異なるバックロードホーン型では音道が長ければ長いほど効果を与える周波数が下がっていきます。
音の早さは340m/秒(1気圧・気温15℃)ですから、100Hzまで増強効果を得ようとすれば、ホーンが3.4m必要となる理論です。
ユニット前面からの放出される低音がありますから、実際はまだ低域方向の音も全体としては含まれます。
ということで、仮に3.4mとしてもストレートなホーン形状では、この長さを自宅ではまず設置不可能ですが、折り曲げが可能となれば状況は変わります。
先ほどのバックロードホーンのイメージを、板材で作るイメージはざっとこんな感じ。
さてこれを箱型に収めようとすると、次のように折り曲げて格納するイメージとなります(音道が上のイメージと合ってないのはお許しを)
まぁこれは説明用のイラストですが、長岡氏が数々設計された中にもこのような箱型タイプがいくつかあります。
(長岡氏の考案スピーカーについては、詳しく説明されている本や、webサイトがありますのでそちらをご参照ください。下記に参考サイト有)
さて、製作難度はその構造上の手間を考えると、やはりバスレフ型等より一段と難しくなります。メーカーもこの点で量産効果が上がらないとみてかほとんど参入してないですね。
(株式会社長谷弘工業の考案タイプは、量産化のひとつの答と思います。下記に参考情報有)
さて、バックロードホーンスピーカーを作ろうとすれば、板材はかなりの量を切断する必要がありますよね。
必要な板を、ノコギリを使って手でジコジコジコと切るのもダメとはいいませんが、音道を組み上げたら音道に隙間がたくさん…というのは何とも悲しい事態ですので、なるべく精度が出るホームセンター等の機械を活用する方法が良いと思います。
まぁ、そのホームセンターでもお店によって上手い下手があるのも事実ですが、多少腕が悪いとはいっても機械精度は人手のジコジコより上ですので、利用しない手はないでしょう。
多少の隙間等は接着剤の量や種類を変えてエポキシ系を使う等でもカバーできるのでは?と思います。
バックロードホーン型ですが、バスレフ型であればホルムヘルツの共鳴の法則によって、空気室容量とダクトの断面積と長さである程度の設計が可能となるのですが、バックロードホーン型はあまりそのあたりの公式等が出ていません。
長岡氏の本のいずれかにそういった式の記載があるらしいですが、とても難しい公式で私の頭では理解できません(汗)
(その記述された本を持っておりませんので、ここでは割愛します)
バックロードホーンタイプで使用するスピーカーユニットは、強力なマグネットを装備して、またコーンが軽く作られているものが好まれます。
この強力なタイプは、FOSTEXからいくつか出てますし限定品などは人気の的。
軽いコーンを強力な磁石でドライブする。
コーンを動かすだけでなく止める制動力でも有利ですから、音源に忠実な音を再生するのに適しているとされます。
ユニットの背後は、密閉型やバスレフ型に比べると空気抵抗がかなり低く、ユニットの動きを妨げ難いというメリットもあります。
このタイプのスピーカーユニットは、バスレフ型ではまずうまく鳴りません。
あまりに振動にキレがあるもので、特に背後の空気室の空気が振動をうまく受け止められずに空振り現象となって、低音増強が機能しないのです。
バスレフ型には、イメージとしては「どっこいしょ!」とコーンが動くスピーカーユニットタイプが低音増強面には概ね適していますが、この点がバックロードホーンファンからすれば反応の遅い低音に聞こえてしまう要因のようです^^。
バックロードホーンの場合には、わずかな空気室からすぐに音道、すなわちバックロードホーン部へとつながっています。
スピーカーユニットの鋭い振動が、空気室というクッションを通さず、このバックロードホーン部へ伝わり低域の増強効果を生みます。
本格的なバックロードホーンタイプはまだ自作しておりませんが、長岡氏設計のD58かD55の音を聴いたことがあります。
ユニットはFOSTEXの限定ユニットでした(型式は覚えてません)。
強力なユニットであることもありますが、バックロードホーン型の背面ストレスの少ない構造が、ユニットの振動に負担を与えにくい点はメリットとして大きいでしょう、とてもクリアな音質感。
大きな筐体でもありますし大きく前面開口したホーン部から、もりもり低音増強があるのかと先入観を持ってましたら、その点は意外にも上品な低音。
個人的感想ですが、派手系なバスレフ2Wayスピーカー等の低音に慣れていると、やや物足りなく感じるかもしれませんが、全体にとてもクリアで、そしてスピード感があるなぁという感想を持った記憶があります。
よく、上質のバックロードホーンを聴いたら、もう他のタイプには戻れない…という話を聞いたりweb上で目にしたりします。
好みは人それぞれですが、バックロードホーン型を自作する人が多いことからも、そういうファンは多いのだなと分かります。
まぁデメリットとしては、バックロードホーン型はスピーカーユニット背面から出た音が、長い音道を通って出てくるので低音の時間差(ズレ)が気になる、という指摘があります。
分速340mの音が、仮にバックロードホーン部3.4m抜けてくる差としては0.01秒?ということですが、どうなのでしょうね。
バスレフ型も位相反転による僅かなズレは起きておりますし、実際に聞き比べて好みを探るしかないと思いますね。
(※参考1)
長岡氏のバックロードホーン型代表作スワンタイプのイメージ
ちょうど頭部のユニット部から、首から体部のバックロードホーン部の姿が白鳥に似ているデザイン。
頭部スピーカー取り付け面が極端に小さく、点音源という点でも大変優れているとの評価。
(※参考2)
株式会社長谷弘工業「バックロードホーンスピーカー」
積層タイプのバックロードホーンで、自作キットの販売もされている。下記はその一例。
(※参考3)
オーディオテクニカ社より発売されている、バックロードホーンスピーカーセットの機器(スピーカー単体購入も可能のようですね)。
かなり小型のバックロードホーンのようで、どんな音か興味があります。
詳細は株式会社オーディオテクニカ社の商品ページにてご確認ください。
(※参考4)
全体にすばらしいですが、特に長岡氏のバックロードホーンスピーカーの解説が見事なサイト。
参考になります。
2009年04月30日作成
2009年05月01日一部更新
2011年10月16日一部調整
2014年04年10日一部リンク先変更
コメント & トラックバック